「月初になってから月次決算を始めても、とても間に合わない」
私が経理の新人だった頃に、身をもって感じたことです。毎月1日から作業を始めたのでは、締切までに終わる気がしませんでした。そこで、できることは早めに取り掛かるようにしていました。慣れないうちは作業そのものに時間がかかるうえ、判断に迷う場面も多いため、なおさら時間の余裕が必要だったのです。
この記事では、月次決算とは何かという基本から、作業を早く終わらせるための考え方まで、経理担当者として実際に工夫してきたことを交えてお伝えします。
月次決算とは?年次決算との違いを確認しよう
月次決算とは、毎月末に1ヶ月分の収支をまとめて経営状況を把握するための作業です。年に1回行う年次決算とは異なり、月単位で会社の財務状況を確認することができます。
月次決算と年次決算の違い
| 項目 | 月次決算 | 年次決算 |
|---|---|---|
| 頻度 | 毎月1回 | 年1回 |
| 目的 | 経営状況の月次把握 | 税務申告・株主報告 |
| 法的義務 | なし | あり |
| 作成書類 | 試算表・損益計算書など | 決算書・税務申告書など |
| 重要度 | 経営判断に直結 | 法的義務・対外的な報告 |
月次決算が重要な理由
- 経営の異常を早期に発見できる
売上の急落や経費の増加にすぐ気づき、早めに対策が打てます。 - 年次決算がスムーズになる
毎月きちんと帳簿を整理しておくことで、年次決算時の作業量を大幅に減らせます。 - 資金繰りの把握に役立つ
月ごとの入出金を把握することで、資金不足を事前に防げます。
月次決算を行うタイミング
一般的に、翌月の10日前後までに前月分を完成させるのが目安です。早ければ早いほど経営判断に活かせるため、できるだけ翌月5日以内を目標にしましょう。
月次決算が終わらない本当の理由は「自分の作業」ではない
月次決算が遅れると、つい「自分の作業が遅いせいだ」と考えてしまいがちです。ただ、実務を続けてきて感じるのは、遅れの原因は自分の手元よりも、外から届く書類を待っている時間にあることが多い、ということです。
取引先からの請求書が届かなければ、仕入や経費の計上は確定できません。どれだけ入力が速くても、待っている間は前に進めないのです。ここを見落としたまま「もっと速く入力しよう」と自分を追い込んでも、月次決算が早く終わることはありません。
つまり月次決算の効率化とは、作業を速くすること以上に、待ち時間をどう減らすかという話でもあります。この視点を持つだけで、打つべき手が変わってきます。入力の手を速めるのではなく、書類が早く手元に揃うように働きかける。同じ「効率化」でも、向き合う相手がまったく別なのです。
私の場合は「請求書が届くのを待たない」ようにしている
私の場合、請求書が遅く届く取引先には、締め日の前に連絡を入れるようにしています。届かないことに気づいてから催促するのではなく、届く前に一声かけておくという進め方です。
相手にも事情がありますから、連絡すれば必ず早くなるというものではありません。それでも、こちらが締切を把握していることを伝えておくだけで、後回しにされにくくなります。何より、連絡した時点で「まだ届いていない先」が自分の中で明確になるため、締め直前になって慌てずに済みます。
新人の頃から早めに取り掛かるようにしていたのも、同じ理由です。月末までにできることを前倒ししておけば、月が変わってからは「待っていた書類の処理」に集中できます。逆に、月初から一斉に動き出そうとすると、自分の作業と書類待ちが同時に押し寄せて、身動きが取れなくなってしまいます。
締め直前に請求書が届いていなくて焦った話
とはいえ、私自身も何度も失敗しています。締め直前になって、届いているはずの請求書がまだ届いていないことに気づき、慌てて連絡したことがありました。
さらに厄介だったのが、「今月はこの取引先からの請求はないだろう」と思い込んで、確認そのものを怠っていたケースです。実際には請求があり、後から請求書が届いてびっくりする、ということがありました。届いていないことに気づいていれば追いかけられますが、そもそも「ない」と思い込んでいると、確認する機会すら生まれません。
この経験から学んだのは、「請求がないはず」という自分の記憶を信じすぎないことです。前月や前年同月の実績と照らし合わせて、本当にないのかを確認する。この一手間を挟むだけで、締めた後に慌てる場面はかなり減りました。
思い込みは、慣れてきた頃ほど起こりやすいように感じます。毎月同じ取引先とやり取りしていると、「今月はなかったな」という感覚が先に立ってしまうためです。記憶ではなく記録で確認する、という当たり前のことが、忙しい時期ほど疎かになりがちだと痛感しました。
月次決算を早く終わらせる4つのコツ
待ち時間を減らす工夫と合わせて、日々の作業そのものを効率化するコツも紹介します。どれか1つでも取り入れるだけで、作業時間を短縮できます。すべてを一度にやろうとせず、取り組みやすいものから始めてみてください。
コツ① 日次入力を習慣化する
月次決算が遅くなる原因のひとつが、日々の仕訳入力が溜まっていることです。毎日または週1回のペースで入力しておくことで、月末の作業量を大幅に減らせます。前倒しでできる作業の代表格です。
まとめて入力しようとすると、書類を探すところからやり直しになったり、記憶が薄れて内容を確認し直す手間が発生したりします。溜めないこと自体が、実は一番の時短になります。
コツ② 経費精算のルールを統一する
経費精算のルールがバラバラだと、確認作業に時間がかかります。締め日・提出フォーマット・少額経費の処理ルールを決めて統一しておきましょう。ここも、社内に働きかけることで待ち時間を減らせるポイントです。
コツ③ 前月との差異確認を習慣化する
試算表を作成したら、必ず前月と比較します。大きく変動している科目があれば原因を確認しましょう。異常の早期発見が、修正作業の短縮につながります。
コツ④ 月次決算の作業をマニュアル化する
自分だけが理解している作業手順を、マニュアルにまとめておきましょう。担当者が変わっても同じ品質で作業でき、自分自身も毎月迷わず進められます。
月次決算の遅れを防ぐ、事前対策の一覧
ここまでの内容を、月次決算が遅れる原因ごとに整理します。締め日を迎える前に手を打てるものばかりです。
| 遅れの原因 | 締め日前にできる対策 |
|---|---|
| 取引先からの請求書が届くのが遅い | 遅れやすい取引先を把握し、締め日前に連絡を入れておく |
| 「今月は請求がない」と思い込んでいた | 前月・前年同月の実績と照らし、本当にないか確認する |
| 月初になってから作業を始めている | 日次入力・書類整理など、月末までにできる作業を前倒しする |
| 書類が揃うまで手が止まっている | 届いているものから順に処理し、待ち時間を作らない |
| 社内の経費精算が集まらない | 締め日と提出ルールを事前に周知しておく |
この表のように、月次決算の遅れは締め日を迎える前の準備でかなり防げます。当日に急いで挽回しようとするより、事前に手を打つほうがずっと効果的です。
月次決算でつまずいたときは
月次決算を進める中でよくあるつまずきについては、それぞれ個別の記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
- 残高が合わないとき → 帳簿の1円が合わないときの対処法|チェック手順と考え方
- 勘定科目の判断に迷ったとき → 勘定科目の選び方|迷ったときのコツ
- 入力ミスが見つかったとき → 経理のミスへの対処法|気づいたタイミングで変わる向き合い方
- 複数の業務が重なったとき → 経理の仕事の優先順位|判断基準は「相手先」
まとめ|月次決算は「待ち時間を減らす」ことがカギ
月次決算とは、毎月の経営状況を把握するための作業です。法的な義務はありませんが、経営判断に直結する重要な役割を持っています。
そして、月次決算が終わらない原因の多くは、自分の作業スピードではなく、外から届く書類を待っている時間にあります。だからこそ、請求書が遅れやすい取引先に締め日前に連絡を入れる、「請求がないはず」という思い込みを実績と照らして確認する、といった締め日を迎える前の一手間が効いてきます。
新人の頃の私がそうだったように、月初から慌てて始めるやり方では、どうしても間に合いません。前倒しでできることを一つずつ増やしていけば、月次決算は少しずつラクになっていきます。
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