年末調整の流れとチェックリスト|経理担当者が押さえておくべき手順と注意点

keiri-tobira

【2026年9月 更新】この記事の控除額は、令和8年分(今年の年末調整)の内容です。
令和8年度税制改正により、扶養親族・同一生計配偶者の合計所得金額の要件は62万円以下(給与収入のみの場合、136万円以下)になりました。あわせて、給与所得控除の最低保障額も65万円 → 74万円に引き上げられています。
これらの改正は令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税に適用されます(令和8年11月までの源泉徴収事務に変更はありません)。
出典:国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」

目次

年末調整とは?確定申告との違いを確認しよう

年末調整とは、会社が従業員に代わって1年間の所得税を計算し、過不足を精算する手続きです。毎月の給与から源泉徴収している所得税は、あくまでも概算のため、年末に正確な金額に調整する必要があります。


年末調整と確定申告の違い

項目年末調整確定申告
対象者給与所得者(会社員・パートなど)個人事業主・副業収入がある人など
手続きの主体会社(経理担当者)本人
実施時期毎年11月〜12月翌年2月16日〜3月15日
対象となる税金所得税所得税・消費税など
手続きの複雑さ会社が代行するため本人は書類提出のみ本人がすべて行う

年末調整が必要な人・不要な人

区分内容
年末調整が必要12月31日時点で在籍している従業員
年末調整が不要年収2,000万円超の従業員・扶養控除等申告書を他社に提出している人(従たる給与)
別途確定申告が必要医療費控除を受ける従業員/ふるさと納税の寄附金控除を受ける従業員(ワンストップ特例を使う場合は確定申告不要。寄附先が5団体以内で、ほかに確定申告の必要がない人が対象)

経理担当者にとっての年末調整

従業員にとっては「書類を提出するだけ」ですが、経理担当者は書類の回収・計算・納付・法定調書の作成まで多くの作業をこなす必要があります。スケジュールをしっかり管理して、余裕を持って進めることが大切です。

年末調整のスケジュールと全体の流れ

年末調整は10月から翌年1月にかけて行う作業です。期限が決まっているため、スケジュールを把握して早めに動き出すことが大切です。


年末調整の年間スケジュール

時期作業内容
10月中旬各種申告書の準備・従業員への配布
11月上旬従業員からの申告書回収期限を設定
11月中旬申告書の内容確認・不備があれば差し戻し
12月上旬年末調整の計算・過不足額の算出
12月の給与支払時過不足額を給与に反映(還付または追加徴収)
翌年1月10日まで所得税の納付(納期の特例を受けている場合は1月20日)
翌年1月31日まで法定調書・給与支払報告書の提出

年末調整の全体の流れ

① 申告書の配布・回収
従業員に必要な申告書を配布し、記入・提出してもらいます。

② 内容の確認・計算
回収した申告書をもとに、各従業員の所得税を正確に計算します。

③ 過不足額の精算
計算結果をもとに、12月の給与で過不足額を調整します。

  • 源泉徴収しすぎていた場合 → 還付(給与に上乗せ)
  • 源泉徴収が不足していた場合 → 追加徴収(給与から差し引き)

④ 法定調書・給与支払報告書の作成・提出
翌年1月31日までに税務署と市区町村に提出します。


スケジュール管理のポイント

年末調整で最もよくある失敗は、従業員からの申告書回収が遅れることです。11月上旬を提出期限として設定し、リマインドを送る仕組みを作っておきましょう。

従業員から回収する書類一覧

年末調整では、従業員から複数の申告書を回収する必要があります。それぞれの書類の目的と確認ポイントを把握しておきましょう。

① 扶養控除等申告書

全従業員が提出必須の書類です。扶養家族の情報を申告するために使います。本人の基礎控除は、この書類では申告しません(③の申告書で扱います)。

確認ポイント内容
提出対象全従業員(パート・アルバイト含む)
主な記載内容扶養家族の氏名・続柄・所得・マイナンバー
よくある不備扶養家族の所得金額の記載漏れ・マイナンバーの未記入

② 保険料控除申告書

生命保険・地震保険・社会保険料などの控除を申告するための書類です。

確認ポイント内容
提出対象保険料控除を受ける従業員
主な記載内容生命保険料・地震保険料・社会保険料の金額
添付書類保険会社から届く「控除証明書」
よくある不備控除証明書の添付漏れ・金額の転記ミス

③ 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書(1枚の様式)

正式名称は「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」で、1枚の様式に4つの申告がまとまっています。名前が長いので、この記事では「基礎控除申告書」と呼びます。

本人の基礎控除は、この書類で申告します。年末調整で基礎控除を受けるには、本人の合計所得金額の見積額をここに記入してもらう必要があります。配偶者控除・配偶者特別控除、大学生年代の子がいる場合の特定親族特別控除も、同じ1枚に記載します。

確認ポイント内容
提出対象基礎控除を受ける従業員(=原則として全員)。配偶者控除・配偶者特別控除、特定親族特別控除を受ける人も、この1枚に記載する
主な記載内容本人の合計所得金額の見積額/配偶者の氏名・所得・マイナンバー
よくある不備配偶者のパート収入の申告漏れ
配偶者の年収控除の種類
136万円以下配偶者控除(最大38万円)
136万円超〜207万円以下配偶者特別控除(段階的に減少)
207万円超控除なし

④ 住宅借入金等特別控除申告書

住宅ローン控除を受けるための書類です。初年度は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で対応できます。

確認ポイント内容
提出対象住宅ローン控除を受ける従業員(2年目以降)
主な記載内容住宅ローンの年末残高・控除額
添付書類税務署から送付される申告書・金融機関の残高証明書
よくある不備残高証明書の添付漏れ・控除期間の確認漏れ

年末調整の計算手順

回収した申告書をもとに、以下の手順で所得税を計算します。会計ソフトや給与計算ソフトを使っている場合は自動計算されますが、手順を理解しておくことでミスを防げます。


計算の全体の流れ

① 1年間の給与・賞与の合計額を算出    ↓② 給与所得控除を差し引く    ↓③ 各種所得控除を差し引く    ↓④ 課税所得金額を算出する    ↓⑤ 所得税額を計算する    ↓⑥ 住宅ローン控除などを差し引く    ↓⑦ 年間の所得税額を確定する    ↓⑧ 源泉徴収済みの税額と比較して過不足を算出

① 1年間の給与・賞与の合計額を算出

1月から12月までに支払った給与・賞与の合計額を計算します。


② 給与所得控除を差し引く

給与収入から一定額を控除します。給与所得控除額は収入金額によって異なります。

給与収入給与所得控除額
220万円以下74万円
220万円超〜360万円以下収入×30%+8万円
360万円超〜660万円以下収入×20%+44万円
660万円超〜850万円以下収入×10%+110万円
850万円超195万円(上限)

③ 各種所得控除を差し引く

申告書をもとに、以下の控除を差し引きます。

控除の種類内容
基礎控除最大104万円(合計所得金額489万円以下の場合)
扶養控除扶養家族1人につき38万円〜63万円
配偶者控除最大38万円
特定親族特別控除最大63万円(19〜22歳の子が対象。令和7年に新設)
生命保険料控除最大12万円
地震保険料控除最大5万円
社会保険料控除支払った全額

④ 課税所得金額を算出する

給与所得から各種所得控除を差し引いた金額が課税所得金額です。


⑤ 所得税額を計算する

課税所得金額に税率を掛けて所得税額を計算します。

課税所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万1円〜330万円10%9万7,500円
330万1円〜695万円20%42万7,500円
695万1円〜900万円23%63万6,000円
900万1円〜1,800万円33%153万6,000円
1,800万1円〜4,000万円40%279万6,000円
4,000万1円以上45%479万6,000円

⑥〜⑧ 控除・過不足の算出

住宅ローン控除がある場合は税額から差し引き、年間の所得税額を確定します。その後、毎月源泉徴収した税額の合計と比較して過不足額を算出します。

  • 源泉徴収額>年間所得税額 → 還付
  • 源泉徴収額<年間所得税額 → 追加徴収

税務署・市区町村への提出書類

年末調整の計算が完了したら、翌年1月31日までに税務署と市区町村に書類を提出します。


提出書類一覧

提出先書類名提出期限
税務署給与所得の源泉徴収票(※給与支払報告書の提出でみなされる)翌年1月31日
税務署法定調書合計表翌年1月31日
税務署所得税の納付翌年1月10日(納期の特例は1月20日)
市区町村給与支払報告書翌年1月31日

① 給与所得の源泉徴収票

従業員全員分を作成します。令和8年分(2027年1月に提出する分)から、税務署への提出のルールが変わりました。

市区町村に給与支払報告書を提出すれば、税務署に源泉徴収票を提出したものとみなされます。つまり、給与支払報告書をきちんと出していれば、源泉徴収票を別に税務署へ送る必要はありません。

提出の対象も整理され、年の途中で退職した人で年間の給与が30万円以下の人を除く、すべての従業員が対象になりました。「役員は150万円超・在職者は500万円超」という区分は、令和8年12月31日以前に提出する分までの旧基準です。

項目令和8年分(2027年1月提出)から
税務署への提出給与支払報告書を市区町村に提出すれば、提出したものとみなされる
対象全従業員(年の途中で退職し、年間給与30万円以下の人を除く)

従業員本人への交付は、これまでどおり全員に必要です。出典:国税庁タックスアンサー No.7411


② 法定調書合計表

給与・退職金・報酬などの支払い状況をまとめた書類です。税務署に提出します。源泉徴収票は、給与支払報告書を市区町村に提出していれば、別途の提出は不要です(上記のみなし提出)。


③ 給与支払報告書

従業員全員分を作成し、従業員の住所地の市区町村に提出します。市区町村はこの書類をもとに住民税を計算します。


提出方法

方法内容
書面提出用紙に印刷して郵送または持参
e-Tax(電子申告)国税庁のシステムからオンライン提出
eLTAX(電子申告)給与支払報告書を市区町村にオンライン提出

法定調書は、種類ごとに、前々年の提出枚数が30枚以上だった場合、e-Tax等による電子提出が義務づけられています(令和9年1月以後に提出する分から。それまでは100枚以上が基準でした。出典:国税庁タックスアンサー No.7455)。従業員数ではなく、提出した法定調書の枚数が基準である点に注意してください。義務の対象でない場合も、電子申告を利用すると提出の手間が大幅に減ります。

年末調整でよくあるミスと対処法

年末調整は作業量が多いため、ミスが起きやすい時期です。よくあるミスを事前に把握しておきましょう。


ミス① 申告書の回収漏れ・提出期限の超過

従業員からの申告書回収が遅れ、年末調整の計算が間に合わないケースです。

対処法:

  • 10月中に申告書を配布し、11月上旬を回収期限に設定する
  • リマインドメールや社内掲示で周知を徹底する
  • 期限までに提出しない従業員には個別に催促する

ミス② 控除証明書の添付漏れ

保険料控除申告書に控除証明書が添付されていないケースです。

対処法:

  • 申告書回収時に控除証明書の添付を必ず確認する
  • 添付漏れがあれば従業員に差し戻して再提出を求める

ミス③ 扶養家族の所得金額の確認漏れ

配偶者やご家族のパート収入が136万円を超えているのに、扶養に入れたまま処理してしまうケースです。

対処法:

  • 扶養控除等申告書の記載内容を必ず確認する
  • 扶養家族の所得が変わった場合は申告書を修正してもらう

ミス④ 住宅ローン控除の適用漏れ

住宅ローン控除の申告書や残高証明書が提出されていないのに気づかず処理してしまうケースです。

対処法:

  • 前年に住宅ローン控除を適用した従業員には、書類提出のリマインドを行う
  • 残高証明書の添付を必ず確認する

ミス⑤ 年末調整後に給与の修正が発生した

年末調整完了後に、給与の計算ミスや追加支給が発生するケースです。

対処法:

  • 1月末までの法定調書提出前であれば、修正して再計算が可能
  • 法定調書提出後に発覚した場合は、確定申告で本人に対応してもらう

ミス⑥ 法定調書・給与支払報告書の提出漏れ

1月31日の提出期限を見落としてしまうケースです。

対処法:

  • 年末調整のスケジュール表に提出期限を明記しておく
  • e-Tax・eLTAXを活用して電子申告にすると提出漏れを防ぎやすくなる

年末調整チェックリスト

年末調整の作業漏れを防ぐために、以下のチェックリストを活用してください。


【準備】10月中に完了させること

・扶養控除等申告書を全従業員に配布したか
・保険料控除申告書を該当従業員に配布したか
・基礎控除申告書(配偶者控除等申告書と兼用の1枚)を全従業員に配布したか
・住宅ローン控除申告書を該当従業員に配布したか
・従業員への提出期限を周知したか


【回収・確認】11月中に完了させること

・全従業員から申告書を回収したか
・扶養家族の所得金額に誤りはないか
・控除証明書の添付漏れはないか
・基礎控除申告書に、本人の合計所得金額の見積額が記入されているか
・配偶者の年収が正しく申告されているか
・住宅ローン控除の残高証明書は添付されているか
・不備のある申告書は差し戻して修正してもらったか


【計算・精算】12月中に完了させること

・1年間の給与・賞与の合計額を正しく集計したか
・各種控除を正しく適用したか
・過不足額の計算は合っているか
・12月の給与で過不足額を精算したか
・従業員への源泉徴収票を作成・交付したか


【提出】翌年1月末までに完了させること

・所得税の納付は1月10日(納期の特例は1月20日)までに完了したか
・法定調書合計表を税務署に提出したか
・給与支払報告書を市区町村に提出したか(源泉徴収票の税務署提出も、これでみなされる)

従業員から聞かれること、答えないと決めていること

年末調整の時期になると、従業員から色々な質問を受けます。毎年必ず聞かれるのは、扶養家族の年収計算と、生命保険料控除の計算です。

このうち「いくらまで働けますか」は毎年必ず聞かれるので、答えを手元に置いています。令和8年分は次のとおりです。

その家族の収入いくらまでなら扶養に入れるか
給与だけ(パート・アルバイト)136万円以下
公的年金だけ(65歳以上)172万円以下
公的年金だけ(65歳未満)122万円以下
内職・在宅ワークだけ131万円以下

配偶者・子ども・親のどれであっても、給与だけなら金額は同じです。ただし136万円を超えても、配偶者は207万円まで、19〜22歳の子は197万円まで、扶養からは外れたうえで別の控除が受けられます。

なお、この表の金額はすべて「収入」です。申告書に書いてもらうのは「所得」で、給与だけなら62万円以下になります。ここを取り違えたまま提出されるケースが一番多いので、聞かれたときは必ずどちらの話かを確かめるようにしています。

ただし、生命保険料控除の計算そのものは、私の会社では本社が担当しています。私の役割は、申告書と控除証明書を受け取り、記載内容が正しいかを確認するところまでです。新人の頃は保険料や国民年金の控除を手計算していましたが、いまは計算を任せられる分、確認の精度のほうが問われるようになりました。

一方で、経理として答えないと決めている質問もあります。その年に住宅を取得した件や、リフォームをした件です。控除の適用は個別の状況によって結論が変わるため、詳しくは税理士や税務署に確認するようお伝えするようにしています。

聞かれたことに全部答えようとすると、経理の仕事の範囲を超えてしまいます。どこまで答えるかを自分の中で決めておくと、迷わずに済みます。

まとめ|年末調整は「スケジュール管理」がカギ

年末調整は毎年必ず発生する重要な業務です。しかし事前の準備とスケジュール管理ができていれば、焦らずスムーズに進められます。この記事で解説した内容をおさらいします。


この記事のまとめ

  • 年末調整とは会社が従業員に代わって所得税の過不足を精算する手続き
  • 10月に申告書配布・11月に回収・12月に計算精算・翌年1月に提出というスケジュールで進める
  • 従業員から回収する書類は「扶養控除等申告書」「保険料控除申告書」「基礎控除申告書(配偶者控除等申告書との兼用様式)」「住宅ローン控除申告書」の4種類
  • 翌年1月31日までに法定調書・給与支払報告書を税務署・市区町村に提出する
  • よくあるミスは申告書の回収漏れ・控除証明書の添付漏れ・扶養家族の所得確認漏れ

年末調整を毎年スムーズに進める3つのポイント

① 前年のスケジュールと反省点を記録しておく
毎年同じミスを繰り返さないために、年末調整が終わったら「来年気をつけること」をメモしておきましょう。

② 使っているシステムで、どこまで自動化されるかを把握しておく
給与計算ソフトや社内システムによっては、年末調整の計算・源泉徴収票の作成・法定調書の提出まで一括で対応できます。ただし、どこまで自動化されるかは環境によって違います。自分の会社では何が自動で、何が手作業になるのかを先に確認しておくと、12月の作業量が読めるようになります。

③ 従業員への周知を早めに行う
年末調整で最もよくある失敗は書類の回収遅れです。10月に入ったらすぐに従業員への周知を始める習慣をつけましょう。


年末調整は経理担当者にとって1年で最も忙しい時期のひとつです。このチェックリストと手順を活用して、今年の年末調整を乗り越えてください。

年末調整の現場で困ったときに、あわせて読みたい記事

ここまでは制度と手順の全体像です。実際に手を動かす場面でつまずいたときは、次の記事もあわせて参考にしてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

中小企業の経理20年目。日商簿記2級。教科書に載っていない実務のつまずきどころを書いています。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次