経理で見落としやすい数字|一番怖いのは「前月と変わらない」金額です

試算表を前に、数字は合っているのに何かが引っかかって手が止まっている経理担当者のイメージ図

「数字は合っている。でも、なんだか気持ち悪い」

経理をしていると、帳簿の数字を見ながら、こう感じることがあります。

私が一番怖いと思うのは、「前月と変わらない」金額です。明らかに変な数字なら手が止まります。でも、いつもと同じ金額は、そのまま見過ごしてしまいやすいのです。

私は中小企業で経理を20年やっています。この記事では、前月と同じように見える数字の間違いにどう気づいたか、普段は何をどの順番で確認しているかを、私の経験から書きます。

試算表を前に、数字は合っているのに何かが引っかかって手が止まっている経理担当者のイメージ図
数字は合っているのに、手が止まるイメージ
目次

経理で見落としやすいのは、明らかに変な数字より「いつも通り」の数字

桁が一つ違う。前月の倍になっている。普段はプラスの金額がマイナスになっている。

こうした数字は目に飛び込んできます。間違いとは限りませんが、「なぜこうなったのか」と確認するきっかけになります。

新人の頃は「大きな間違いをしたらどうしよう」と思っていました。ところが、長く経理をやってみると、私があとになっておかしいと気づいたのは、前月に近い金額や、前月とまったく同じ金額でした。

具体的には、次のような数字です。

  • ある取引先の買掛金の残高
  • ある費用科目の月額
  • リース料

これらは、金額の動き方がそれぞれ違います。リース料など、契約上、毎月ほぼ同じ金額になるものもあれば、取引や支払いの状況で残高が変わる買掛金もあります。

共通していたのは、前月と比べても、私の目にはおかしく映らなかったことです。「いつも通りだな」と思うと、そこで確認したつもりになってしまいます。

経理で見落としやすい数字の対比。明らかに変な数字は気づけるが、前月と変わらない数字はいつも通りに見えてしまうことを示す図
図① 変化が目立つ数字と、「いつも通り」に見える数字

前月との金額比較だけでは、中身の違いを見落とすことがある

前月比較は、金額の増減を見つけるのに役立ちます。私も確認しています。

ただ、前月と同じ金額だからといって、中身まで正しいとは限りません。単価や件数が変わっていても、合計額は同じになることがあります。合計だけを並べていると、こうした違いには気づきにくいのです。

もちろん、本来変わるはずの金額が変わっていなければ、それも確認のきっかけになります。前月比較が役に立たないのではなく、「差がないから問題ない」と判断してしまうことが、私にとっての落とし穴でした。

間違いに気づいたのは、相手先の資料と突き合わせたとき

では、私はどうやって気づいたのか。

相手先の資料と、こちらの数字を突き合わせたときです。この確認を「突合(とつごう)」といいます。そこで初めて「合っていない」と分かりました。

自分の帳簿だけを眺めていたときには、気づけませんでした。その数字が、帳簿の中では自然に見えていたからです。

突き合わせる相手は、ほとんどの場合、相手先から届いた請求書です。

そこで見つかる間違いは、そのときどきで違います。だから私は、間違いの種類を覚えるのではなく、見る順番のほうを決めています。種類を全部は予測できませんが、順番どおりに見れば、引っかかる場所は同じだからです。

相手先の資料と自社の数字を並べて突き合わせている経理担当者のイメージ図
相手先の資料と突き合わせて、初めて気づいた違い

だから私は、帳簿の数字だけで確認を終えず、相手先の資料と照合することを大事にしています。違いが出たら、どこでずれているのかを明細までたどります。

私が数字を確認する順番|残高から中身を見て、最後に比較する

私が確認するときの順番は、だいたい決まっています。

残高 → 明細 → 単価 → 件数 → 前月 → 前年

まず残高を見て、次に、その金額が何の積み上げなのかを明細で確認します。単価や件数があるものは、そこまで見ます。

前月・前年との比較は、そのあとです。先に中身を見ることで、「前月と同じだから大丈夫」と流してしまうのを避けたいからです。

順番 見るもの 確認すること
1 残高 まず、いくらになっているかを確認する
2 明細 何の取引が積み上がって、その残高になっているかを見る
3 単価 単価のある取引は、金額のもとになった単価を確認する
4 件数 何件分の金額かを確認し、合計額だけでは分からない中身を見る
5 前月 前月との差を見て、変わった理由や、変わっていない理由を確認する
6 前年 前年の同じ時期と比べ、季節による動きも見る

これは私が普段使っている順番です。すべての科目を同じ深さで確認するという意味ではありません。確認する数字の性質に合わせて、中身を見ていきます。

経理20年で変えたのは、新しい取引を念入りに見ること

新人の頃と今とで、数字を見る基本は大きく変わっていません。年数を重ねたら、特別な勘が働くようになったわけでもありません。

変えたのは、新しく入ったものがあるときに、そこを念入りに見ることです。

新しい取引先、新しい取引、新しい科目。まだ「いつも通り」がなく、自社の前月の数字と比べる材料も乏しい部分です。だから、他より丁寧に見ます。

経験を積んだ今も、確認の基本は、残高を見て中身を確かめること。そのうえで、新しいものには特に気を配っています。

まとめ|「前月と同じ」で確認を終えない

帳簿の中でつじつまが合っていることと、「なぜこの金額なのか」を説明できることは別です。

私は、数字に違和感が残るなら、金額だけでなく明細まで戻って確認したいと思っています。

  • 前月と同じ、または近い金額でも、中身まで正しいとは限らない
  • 残高から明細・単価・件数を見て、前月・前年との比較につなげる
  • 帳簿だけで完結させず、相手先の資料と突き合わせる
  • 新しい取引先・取引・科目は、特に丁寧に確認する

20年やってきて、私が強く感じるのは、慣れてきた頃があぶないということです。

慣れてくると、見ただけで「いつも通り」と判断できるようになります。仕事が速くなる一方で、同じように見える数字をそのまま通してしまうこともあります。

いま数字を見ていて、うまく言葉にできない気持ち悪さがあるなら、一度止まってみてください。明細を開き、必要な資料と突き合わせる。私が見落としに気づけたのは、その確認でした。

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この記事を書いた人

中小企業の経理20年目。日商簿記2級。教科書に載っていない実務のつまずきどころを書いています。

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