経理の仕事の優先順位|判断基準は「相手先」

複数の業務が重なり優先順位に悩む経理担当者を表すイメージ図

「これも急ぎ、あれも急ぎ…一体どれから手をつければいいんだろう」

月末が近づくと、経理の仕事は複数のタスクが一気に押し寄せてきます。請求書の発行、他部署からの問い合わせ、経費精算の締め処理。優先順位をつけようにも、何を基準にすればいいのか分からず、手が止まってしまう。そんな経験はないでしょうか。私自身、経理担当者として実務をこなす中で、この「何から手をつけるか」で悩んだ時期がありました。

優先順位を間違えると、後になって「なぜあっちを先にやらなかったんだ」と指摘されたり、対応が遅れたことで相手に迷惑をかけてしまったりすることもあります。逆に、判断基準さえ持っていれば、タスクがどれだけ重なっても慌てずに対応できるようになります。特に経理は、社内の複数部署と社外の取引先の両方から仕事が飛んでくる仕事なので、優先順位のつけ方一つで、忙しさの感じ方が大きく変わります。この記事では、私が実際に使っている優先順位の判断基準についてお伝えします。

目次

優先順位は「タスクの種類」ではなく「相手が誰か」で決める

業務が重なったとき、多くの人は「締切が近い順」や「作業時間が短い順」でタスクを並べようとします。ただ、私の場合、この考え方だとかえって迷ってしまうことに気づきました。タスクの種類がバラバラだと、比較する基準が定まらないからです。

そこで私がたどり着いたのは、「タスクの種類」ではなく「相手が誰か」で優先順位を決める、という考え方です。社外(取引先)か、社内(自社の他部署)か。この一本の軸だけで判断すると、業務が重なったときでも迷わずに順番を決められます。

タスクの種類で比較しようとすると、「請求書作成」と「経費精算の締め処理」のどちらが重いか、感覚的に比べにくいものです。ところが「相手が社外か社内か」という軸に置き換えると、比較そのものがシンプルになります。判断基準を一つに絞ることが、迷いをなくす一番の近道でした。

私の場合は「相手先対応」を第一順位にしている

私の場合、相手先(取引先)への対応を第一順位としています。その中でも、請求書作成が最優先のタスクです。業務が重なった場合も、この判断軸はブレさせないようにしています。

一方で、自社の別部署からの問い合わせは、相手先対応より後回しにして、待ってもらうようにしています。マニュアルや上司の指示で決められたルールではなく、自分自身の判断で決めたルールです。

もちろん、社内の問い合わせを完全に無視するわけではありません。あくまで「相手先対応が入っているときは、少し待ってもらう」というだけで、相手先対応が一段落すれば、社内対応にもきちんと時間を使います。優先順位というのは、どちらかを切り捨てることではなく、順番を決めることだと捉えています。

複数の業務が重なり優先順位に悩む経理担当者を表すイメージ図
複数の業務が重なり優先順位に悩むイメージ

なぜ「相手先が第一」なのか

この基準にたどり着いた理由は、相手先から請求金額のチェック・確認の連絡が頻繁に入っていたためです。相手先を待たせてしまうと、取引先との信頼関係に直接影響します。一方、社内の問い合わせは、多少待ってもらっても、関係が壊れることはまずありません。同じ社内なので、事情を説明すれば理解してもらいやすい、という前提もあります。

この基準は、マニュアルを読んで決めたものではありません。実際に何で忙しくなるかを経験する中で、自然と「相手先対応を優先したほうがいい」という判断に落ち着いていきました。優先順位の基準は、経験から逆算して決まるものだと感じています。

もし最初から「タスクをこの順番でやりなさい」というマニュアルが用意されていたら、ここまで自分の頭で考えることはなかったかもしれません。マニュアルがなかったからこそ、日々の忙しさの中で「本当に困るのはどちらか」を実感し、それが結果的に自分に合った判断基準として定着した、という面もあると思います。

締め直前ではなく「締めの3日前」に山を作る

優先順位の基準を決めるだけでなく、私はもう一つ工夫をしています。それが、締めの3日前あたりから前倒しで準備を始めることです。

具体的には、次の2つを締めの3日前から始めます。

  • 自社宛の請求書等をすべて整理する
  • 請求金額と相手先との金額チェック表の作成を開始する

締め直前になってから動き出すと、相手先からの問い合わせラッシュと自分の締め作業が同時に押し寄せ、身動きが取れなくなります。あらかじめ前倒しで準備を進めておくことで、直前の突発対応にも余力を持って対応できるようになります。

この前倒し準備を始めてから、締め直前の数日間の心理的な余裕がまったく違うことに気づきました。何も準備していない状態で問い合わせラッシュに巻き込まれると、パニックに近い状態になりますが、チェック表がある程度出来上がっていれば、問い合わせが来ても「ここを見ればすぐ答えられる」という安心感があります。

優先順位の判断フロー

ここまでの内容を、業務が重なったときにすぐ使える形で整理します。

状況 優先度 対応
相手先(取引先)からの請求金額確認 最優先 即対応。他の作業より先に返す
相手先向けの請求書作成 最優先 締切に関わらず優先的に着手する
自社の別部署からの問い合わせ 後回し可 相手先対応が一段落してから返答する
月次の締め作業全般 前倒しで準備 締めの3日前から資料整理・チェック表作成に着手する

この表のように、「相手が社外か社内か」という一本の軸さえ持っておけば、業務がどれだけ重なっても、慌てずに順番を判断できます。判断に迷ったときは、まず「これは社外向けか、社内向けか」を自分に問いかけてみてください。それだけで、次にやるべきことが自然と見えてきます。

この基準の課題:社内の理解が必要

この基準は、うまくいっている点が多い一方で、課題もあります。社内(別部署)を待たせる形になるため、社内からの理解が必要になるという点です。理解を得られていない相手からは、「対応が遅い」という印象を持たれてしまう可能性もあります。

また、このルールはあくまで個人の判断ベースで決めたものであり、明文化して周囲と共有していたわけではありませんでした。「なぜ社内の問い合わせより相手先を優先するのか」という理由を、あらかじめ周囲に伝えておくと、社内での摩擦を減らせるはずです。社内を後回しにする判断も、明確な理由があれば正当化できると考えています。

理由を伝えずに「後にしてください」とだけ言うと、単に冷たい対応をしているように受け取られかねません。「相手先からの信頼に関わるので、少し待ってもらえますか」と一言添えるだけで、同じ「後回しにする」という行動でも、相手の納得感はまったく変わってきます。基準そのものより、その基準を周囲にどう伝えるかも、実は同じくらい大事なポイントだと感じています。

まとめ

経理の仕事で優先順位に迷ったときは、「タスクの種類」ではなく「相手が誰か」を判断基準にすると、業務が重なっても迷わず順番を決められます。私の場合は、相手先(取引先)への対応、特に請求書作成を最優先とし、社内からの問い合わせは後回しにしてもらっています。加えて、締めの3日前から前倒しで準備を始めることで、直前の突発対応にも耐えられる余力を作っています。

この基準は個人の判断で決めたものなので、社内での共有や明文化という課題は残ります。それでも、判断に迷う瞬間が減るだけで、日々の業務はぐっとラクになります。優先順位に悩んでいる人は、まず「社外か社内か」という一本の軸を試してみてください。きっと、判断のたびに感じていた小さなストレスが減っていくはずです。

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この記事を書いた人

中小企業の経理20年目。日商簿記2級。教科書に載っていない実務のつまずきどころを書いています。

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