経理の新人は何から勉強すべき?|正解より大事な進め方

経理の新人が何から勉強すべきか悩む様子を表すイメージ図

「経理に配属されたけど、何から勉強すればいいんだろう」

初出社の日、デスクに案内されて、パソコンと分厚いファイルだけを渡される。そんな光景を思い浮かべる人もいるかもしれません。

右も左も分からないまま、目の前の資料と机だけが用意されている。経理に配属されたばかりの新人なら、一度はこの不安を感じたことがあるのではないでしょうか。周りの先輩はそれぞれ忙しそうに手を動かしていて、何をどこから聞けばいいのかすら分からない。そんな心細さを覚えている人も多いと思います。私自身、経理担当者として複数の職場を経験してきましたが、この「何から手をつければいいか分からない」という感覚は、実は経験を積んでも案外なくならないものだと感じています。この記事では、経理の新人が何から勉強すべきかについて、私自身の経験も交えてお伝えします。

目次

「何から勉強すべきか」に唯一の正解はない

結論から言うと、経理の新人が最初に勉強すべきことに、万人共通の正解はありません。ネットで調べれば「まずはこれから」という情報はいくらでも出てきますが、実際に最初に取り組む業務は、配属される会社や部署の業務フローによって大きく変わります。

これは決して逃げの言葉ではなく、実務経験を通して強く実感していることです。「これさえ覚えれば安心」という汎用的な正解を探すよりも、まずは配属先で実際にどんな業務フローになっているかを確認する姿勢のほうが、結果的に近道になります。

会社の規模、業種、使っている会計ソフト、担当する業務範囲。これらが変われば、新人がまず任される業務も、優先して覚えるべき知識も変わってきます。同じ「経理」という肩書きでも、会社が変われば最初の一歩がまったく違う、というのはごく自然なことなのです。

私の場合は、前職と現職で最初の業務がまったく違った

私の場合、前職では、最初に任された業務は書類の整理でした。一方、現職に転職してからは、最初に担当したのは現金精算(経費精算)でした。同じ「経理」という職種でも、最初に触れる業務はここまで違うのかと、自分自身驚いた記憶があります。

もし前職での経験を基準に「経理の新人はまず書類の整理から」と思い込んでいたら、現職では的外れなスタートを切っていたかもしれません。この経験から、最初に覚えるべきことは会社ごとに違う、ということを身をもって実感しました。

振り返ってみると、前職での書類の整理は、地味な作業ではありましたが、どんな書類がどう扱われ、どこに保管されているのかという、経理業務全体の流れに自然と触れる機会になっていました。一方、現職での現金精算は、社内の他部署とのやり取りや、経費のルールを覚えるところから始まりました。どちらが正解ということではなく、それぞれの会社が「新人にまず慣れてほしい」と考えている業務が違っていた、ということなのだと思います。

独学だけで進めるのはおすすめしない

経理の勉強というと、本やネットで自己学習を進めるイメージを持つ人も多いと思います。ただ、私の場合、この独学だけに頼るやり方はおすすめしていません。理由は単純で、経理の処理方法は会社ごとに違うため、独学で得た一般的な知識が、必ずしも自社のやり方と一致するとは限らないからです。

本やネットの情報は、あくまで一般論としては正しいことが多いものです。しかし、実際の処理は会社の慣習や過去からのルールに沿って行われていることが多く、一般論とはずれた運用になっているケースも珍しくありません。

例えば、勘定科目の使い分け一つとっても、教科書的には正しい分類のはずが、その会社では長年別の科目で処理する慣習になっている、ということは珍しくありません。独学で仕入れた「正しいはずの知識」と、目の前の会社の「実際の運用」がぶつかったとき、新人の立場ではどちらを信じればいいか分からなくなってしまいます。

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経理の新人が何から勉強すべきか悩むイメージ

誰にも指摘されないまま思い込みが定着するリスク

独学だけで進めることの一番のリスクは、「誰にも指摘されないまま、それが正しいと思い込んでしまう」ことです。本やネットで学んだやり方を、自社の実務にそのまま当てはめて処理を続けていると、間違っていたとしても、誰かに指摘されない限り気づく機会がありません。

そのまま時間が経ってしまうと、間違った処理が積み重なり、後になって大きな問題として発覚することもあります。新人のうちに軌道修正できていれば小さな話で済んだはずのことが、気づくのが遅れるほど、修正の負担も大きくなっていきます。しかも厄介なのは、本人は「正しくやっている」と思い込んでいるため、自分から違和感に気づくことがほとんどない、という点です。

新人のうちは「聞くこと」をためらわない

独学の代わりに私がおすすめしたいのは、周囲の先輩・上司に直接聞くことです。多少頼りないと思われるかもしれない、忙しそうで聞きづらい、そう感じる気持ちはよく分かります。それでも、新人のうちに聞く習慣をつけておくことには、大きな価値があります。

新人という立場は、分からないことを質問しても不自然に思われない、いわば「聞くことが許される期間」でもあります。この期間のうちに、聞ける相手・聞ける環境を作っておくことが、後々の自分を助けてくれます。逆に、聞かないまま何年も経ってから同じ質問をするほうが、よほど聞きにくくなってしまうものです。

誰に聞けばいいか分からない場合は、まず直属の先輩や指導担当の人に聞くのが基本です。ただ、それだけに頼らず、他の先輩や、場合によっては別部署の担当者に確認したほうが早いこともあります。「この人に聞けば大体のことは分かる」という相手を、複数見つけておくと安心です。1人に絞ってしまうと、その人が忙しいときや不在のときに聞けなくなってしまうので、頼れる相手は多いに越したことはありません。

配属先のやり方をまず確認する姿勢が近道

経理の新人がまずやるべきことは、「これを覚えれば安心」という汎用的な正解を探すことではなく、配属先の業務フローを確認することです。前任者はどう処理していたのか、この会社ではどのルールで運用されているのか。それを早い段階で把握できれば、独学で遠回りをする必要はなくなります。

本やネットの知識がまったく無意味というわけではありません。基本的な考え方を理解する助けにはなります。ただ、それを鵜呑みにして自社のやり方を確認しないまま進めてしまうことが、一番避けたい落とし穴だと感じています。

具体的には、新しい業務を任されたら、まず「これは前任者はどう処理していたか」「マニュアルや過去の資料は残っていないか」を確認するところから始めるとよいと思います。それでも分からない部分があれば、遠慮せずに聞く。この順番を守るだけで、独学だけで突き進んでしまうリスクをかなり減らすことができます。

「これだけは早めに」と言われがちな3つ

会社ごとに違うとはいえ、経理として早めに押さえておくと後が楽になるものが3つあります。

  1. 借方・貸方の感覚:暗記ではなく、資産が増えたら左、といった感覚として身につけておくと、初めて見る取引でも当たりをつけられます。
  2. 自社の勘定科目一覧:一般的な科目ではなく、自社で実際に使われている科目を一覧で把握しておくこと。使っていない科目を覚える必要はありません。
  3. 消費税の課税・非課税の区分:仕訳のたびに判断が必要になるため、早い段階で基本の区分だけでも押さえておくと入力速度が変わります。

逆に、簿記の資格取得や高度な会計基準の学習は、実務に慣れてからで十分間に合います。最初の1ヶ月は、資格の勉強より自社の業務フローの理解を優先してください。

まとめ

経理の新人が何から勉強すべきかに、万人共通の正解はありません。最初に取り組む業務は会社によって異なり、私自身も前職と現職とではまったく違う業務からのスタートでした。本やネットでの独学だけに頼ると、自社のやり方とずれた知識のまま思い込んでしまうリスクがあります。だからこそ、新人のうちから周囲の先輩・上司に聞く習慣をつけ、配属先のやり方をまず確認する姿勢を大切にしてください。

焦って一人で正解を見つけようとしなくても大丈夫です。分からないことを分からないままにせず、一つずつ確認しながら進めていけば、経理の仕事は少しずつ必ず身についていきます。今、何から手をつければいいか分からず焦っている人にも、この考え方が少しでも安心材料になれば嬉しいです。

その積み重ねが、遠回りに見えて、実は一番の近道になります。

経理という仕事は、覚えることの量そのものよりも、「どこまでが会社共通のルールで、どこからが自社独自のやり方なのか」を見極める力が問われる仕事だと感じています。新人のうちは、その線引きがまだ自分の中にできていないからこそ、独学だけで判断せず、周囲に確認しながら少しずつ自分の中の地図を作っていくことが大切です。

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この記事を書いた人

中小企業の経理20年目。日商簿記2級。教科書に載っていない実務のつまずきどころを書いています。

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