「教科書に載っている科目、実務で見たことがない…」
経理の実務をしていると、簿記の教科書や研修で習った内容と、実際の会社での処理がかみ合わずに戸惑う場面があります。私自身、経理の実務担当者として、このギャップに何度も引っかかってきました。この記事では、教科書的な知識と実務の違いに、私がどう向き合ってきたかをお伝えします。
先に私の経歴を簡単に書いておきます。日商簿記2級を取ったのは高校在学中で、資格が先、実務が後という順番でした。その後、中小企業で経理の実務を続けてきました。この順番が、後になって効いてきます。
教科書の勘定科目と実務の勘定科目は別物
簿記の教科書や研修で習う勘定科目と、実際の実務で使う勘定科目は、全然違うことが珍しくありません。教科書通りに覚えたはずの知識が、そのままでは実務に使えないという場面に、多くの人がぶつかります。
私の場合、教科書には「支払手数料」という勘定科目が載っていますが、実務ではその科目自体を使っていません。会社によって、実際に運用している勘定科目のセットは異なります。教科書の一覧をそのまま当てはめようとすると、かえって迷ってしまうのです。

実務経験があるからこそ、資格勉強がかえって難しくなる
意外に思われるかもしれませんが、実務経験がある人ほど、簿記資格の勉強で苦労することがあります。私の場合も、簿記資格の勉強中に、実務での感覚がちらついてしまい、かえって知識がごっちゃになった経験があります。実務経験があるからこそ、資格勉強の方が大変だったというのが、正直な実感です。
「実務ではこうしているのに、教科書ではこう習う」というズレに、実務経験がある人ほど引っかかりやすいという逆説的な難しさがあります。これは知識不足が原因ではなく、むしろ経験があるがゆえに起きる混乱です。
実務未経験の人であれば、教科書の内容をそのまま素直に吸収できます。ところが実務経験があると、問題を読むたびに「自分の会社ではこう処理していたな」という記憶が先に浮かんでしまい、教科書のルール通りに考えようとする邪魔をしてくるのです。
選択式なら解けるのに、記述式だと手が止まる
この「経験があるがゆえの混乱」は、試験の解答形式によってはっきり差が出ます。私が実際に感じたのは、次のような違いでした。
解答欄に使う勘定科目が用意されている問題であれば、対応できます。選択肢の中に教科書の科目が並んでいるので、そこから選べばいいからです。実務の記憶が浮かんでも、「この中にはないな」と気づける。
ところが、勘定科目を自分で書く筆記の問題になると、手が止まります。頭に真っ先に浮かんでくるのが、日ごろ職場で使っている科目だからです。そしてそのまま書いてしまい、結果として不正解になる。実務では毎日それで通っている処理なのに、試験では×がつくわけです。
知識が足りないから間違えたのではありません。むしろ日常的に手を動かしているからこそ、その科目が先に出てきてしまう。実務経験が長いほど、この現象は起きやすくなると感じています。
入社後に簿記検定の類を受けようとすると、この壁にぶつかります。資格の勉強を先に済ませていた高校時代のほうが、かえって素直に解けていたというのが、正直なところです。
資格勉強と実務は「別物」として割り切る
このギャップに対処するには、資格勉強と実務は「別物」として頭を切り替えるしかない、というのが私の結論です。資格の勉強をしているときは、教科書のルールに沿って正解を出すことに集中し、実務での職場のやり方は、いったん脇に置いておく。逆に実務では、資格の教科書ではなく、その会社の実際のルールに従う。この切り替えを意識するだけで、混乱がかなり減ります。
勘定科目の使い方に迷ったら、教科書ではなく会社のルールに従う
実務における勘定科目の使い方は、会社ごとの規定や、これまでの運用ルールに従って継続・対応すべきものです。勘定科目の使い方に迷ったら、教科書を基準にするのではなく、その会社の規定や過去の処理ルールに従うのが、実務上の正解になります。
これから経理を目指す人や、資格勉強中の人にお伝えしたいのは、「簿記の教科書的な知識と、実際の会社での勘定科目の使い方には差があることは珍しくない」ということです。差があること自体に驚いたり、自分の理解不足だと思い込んだりする必要はありません。実務と資格勉強は別物だと割り切ることが、大切な心構えです。

逆に言えば、これから経理を目指す未経験の人にとっては、資格勉強で得た知識がそのまま実務の土台になります。実務未経験のうちに教科書の内容をしっかり身につけておき、実際に配属された会社で「ここは教科書と違うんだな」と一つずつ上書きしていく、という順番であれば、それほど大きな混乱にはなりません。
ギャップを埋めるための3ステップ
- 教科書の知識をいったん保留にする:新しい会社・部署に入ったら、まずその職場の過去の処理例を見ることを優先します。
- 差分だけをメモする:教科書と違う部分だけを書き出しておくと、情報量が絞られて頭に入りやすくなります。
- 差分の理由を確認する:可能であれば「なぜこの処理にしているのか」を先輩や上司に確認しておくと、応用が利くようになります。単なる暗記でなく、判断基準として身につきます。
まとめ
簿記の教科書や研修で習った勘定科目と、実際の実務で使う勘定科目には、差があることが珍しくありません。この差に戸惑ったときは、資格勉強と実務を「別物」として切り替え、実務での判断は教科書ではなく、その会社の規定や過去の運用ルールに従うようにしましょう。実務経験がある人ほど資格勉強でギャップに引っかかりやすいものですが、それは知識不足ではなく、経験があるがゆえの自然な戸惑いです。選択肢から選ぶ問題なら解けるのに、自分で勘定科目を書く問題になると実務の科目が出てきてしまう。そんなときは、自分の理解が足りないのではなく、頭が実務向きに仕上がっているのだと考えてください。
勘定科目の使い方でほかにも迷ったら
実務での勘定科目の使い方に迷う場面は、ほかにもいろいろあります。次の記事もあわせて参考にしてください。
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