「なぜ、期限までに出してくれないのか」
経理をしていると、他部署に対してそう思う場面があると思います。何度言っても書類が上がってこない。催促すれば嫌な顔をされる。こちらは決められた期限で処理しているだけなのに、なぜか自分のほうが悪者になっている。
私は中小企業で経理を20年やっています。この記事では、経理に携わったときに上司から言われた言葉と、その意味が分かるまでにかかった時間の話を書きます。すべて私の場合の話として読んでください。

新人の頃、イライラしていたのは私ではありませんでした
正直に書くと、新人の頃の私は、他部署に対してそれほどイライラしていませんでした。
イライラしていたのは、上司のほうです。
ただ、書類を確認する役は私でした。上がってきたものを見て、足りないところを見つけて、本人に確認しに行く。その工程を担当していたのは私だったので、上司がいら立っていれば、結局そこに巻き込まれます。
自分が怒っているわけではないのに、間に立っている。1〜3年目でこの位置にいる人は、少なくないのではないかと思います。
確認する役は、決める役ではありません
確認する役と、決める役は違います。それでも、相手から見れば、目の前にいる人が「言ってくる人」です。
決めた人ではなく、伝える人が矢面に立ちます。ここに、経理の1〜3年目がイライラを引き受けやすい理由があると思っています。
自分で決めたことなら、まだ説明のしようがあります。自分が決めたわけではないことを、決めた立場でもないのに伝える。これはやりにくい仕事です。
経理に携わったとき、上司に「嫌われろ」と言われました
最初に言われた言葉を、いまでも覚えています。
「会社の金庫番がやさしいと、断れなくなる。だから嫌われろ」
正直、意味が分かりませんでした。
これから仕事を覚えようという人間に、いきなり嫌われろと言う。分かるわけがなかった、というのが当時の実感です。
実際にされたのは、こういうことです
他部署とやり取りをしていると、感じのよくない場面はあります。
領収書を投げるように渡される。嫌味を言われる。文句を言われる。
新人の頃、私はこれを自分で処理していませんでした。上司に投げていました。自分の立場では強く言えないので、対応そのものを引き取ってもらっていたわけです。
今は、直接、相手に言います。
ここだけを見ると、慣れて図太くなっただけのように見えるかもしれません。ただ、そうではありませんでした。

断れるようになるまで、3年かかりました
他部署に対して自分で言えるようになるまで、3年くらいかかりました。
何かをきっかけに、ある日できるようになったわけではありません。徐々にです。
変わったのは、こういうことが判断できるようになったからでした。
この支出は、会社に必要なものか。個人寄りになっていないか。
これが分かるようになると、断る場面で迷わなくなります。逆に言えば、分からないうちは断れません。自分に判断がついていないものを、自分の判断で止めることはできないからです。
やさしいから断れないのではなく、判断できないから断れない
ここまで書いて、20年前に言われた言葉の意味が、ようやくつながります。
上司は「やさしいと断れなくなる」と言いました。ただ、実際に自分でやってみて思うのは、少し違います。
やさしいから断れないのではなく、判断できないから断れないのだと思います。
性格の問題ではありません。基準を持っていないと、断る根拠が「なんとなく」になります。なんとなくで断れば、相手は納得しません。納得していない相手を押し返すのは、経験の浅いうちには難しいことです。
結果として、通してしまう。やさしいから通したのではなく、押し返す材料がなかったから通した、というほうが近いと思います。
嫌われろというのは、性格を変えろという話ではなかったのだと、いまは理解しています。断れるだけの基準を持て、ということだったのだと思います。
相手にも事情はあります。ただ、黙られると何もできません
断る側の話ばかり書きましたが、遅れてくる側にも事情はあります。後から事情を知ったことは、たくさんあります。
ただ、事情があるからしょうがない、では通りません。処理には期限があり、期限を過ぎれば別の月の話になります。事情があること自体は、期限をなくす理由にはならないからです。
そのうえで、実際にいちばん困るのは、事情があることではありません。
黙られることです。
一言でも言ってくれれば、こちらで対応できることは多いのです。
領収書をなくして、それを言えなかった人がいました
領収書をなくしてしまった人がいました。その人は、なくしたことを言えずに黙っていました。
結果としては、対応しました。仕事のための出費であれば、私はできるだけ精算してあげたいと思っています。
ただし、そのためには、なくしたという事実がこちらに伝わっている必要があります。黙っている間、こちらは何も知りません。できることがあるのに、それが使えない状態が続くだけです。
遅れる部署は、だいたい決まっています
20年やってきて分かっていることが、もう一つあります。
遅れる部署は、だいたい同じです。
理由もだいたい同じで、出し忘れ、確認忘れ、まとめ忘れのどれかです。毎回、特別な事情が起きているわけではありません。
ですから私は、全体への周知とは別に、遅れる部署には個別に、早めに直接声をかけています。出てこなければ処理はしない、ということも、そのときに伝えます。
締め日のルールそのものをどう決めて、どう社内に定着させたかについては、別の記事に書いています。
後輩が「他部署にイライラする」と言ってきたら
いまは、後輩から他部署への不満を聞くことがあります。
そのとき私は、まず黙って聞きます。
そのうえで、一つだけ聞きます。
「それで、何か対応したの?」
冷たく聞こえるかもしれません。ただ、イライラしているという話と、実際に手を打ったかどうかは、別の話だと思っています。
まとめ
他部署にイライラする、という悩みについて、私の場合を書いてきました。
- 新人の頃、イライラしていたのは上司で、私は確認役として間に立っていた
- 経理に携わったとき「会社の金庫番がやさしいと断れなくなるから、嫌われろ」と言われたが、当時は意味が分からなかった
- 自分で言えるようになるまで3年かかった。変わったのは、会社に必要な支出かどうかを判断できるようになったから
- 相手にも事情はある。ただ、黙られると何もできない。一言あれば対応できることは多い
嫌われ役を引き受けるというのは、冷たくなることではありませんでした。仕事のための出費なら、できるだけ精算してあげたい。そのうえで、通せないものは通せないと言う。この両方を持てるようになるまで、私は3年かかりました。
いま断れずに抱えている人がいたら、性格の問題だと思わなくていいと思います。判断するための材料が、まだそろっていないだけかもしれません。3年かかった人間が言うので、そこは間違いないと思います。
あわせて読みたい記事
この記事が役立ったら、ぜひSNSでシェアしてください。
コメント