「仕訳って何?、これが何を表しているのか分からない」
私自身、経理の仕事を始めたばかりの頃、まさにこの状態でした。借方・貸方に数字を入れること自体はマニュアル通りにできるのに、それが何を意味しているのかが腑に落ちていなかったのです。この記事では、経理の実務担当者として、私が仕訳の「意味・目的」でつまずいたときの経験と、そこから抜け出したきっかけをお伝えします。
「やり方」より先に「意味」でつまずいていないか
仕訳がわからないという悩みを持つ初心者の多くは、実は「やり方」よりも先に「意味・目的」でつまずいている可能性があります。借方・貸方のどちらに書くか、というルールは覚えられても、「そもそも何のためにこの作業をしているのか」が分からないままだと、応用が利かず、少し違うパターンの取引が出てきただけで手が止まってしまいます。
私自身、まさにこのタイプでした。作業の手順は覚えていても、意味を理解しないまま処理していたので、イレギュラーな取引に出会うたびに不安になっていました。
仕訳とは何か、何のためにやるのか
仕訳とは、会社のお金や取引の動きを、借方・貸方という2つの側面に分けて記録する作業です。これを積み重ねることで、会社の財産や経営状況を正しく把握できるようになります。つまり仕訳は、単なる入力作業ではなく「会社の活動を記録し、あとから振り返れるようにするための土台」なのです。
この「何のために記録するのか」という目的を先に理解しておくと、個別のルールも「なぜそうなるのか」という筋道で捉えられるようになります。

私の場合は「マニュアルと過去の仕訳」を見て腑に落ちた
私の場合、仕訳の意味が完全に腑に落ちたのは、抽象的な説明を読んだときではなく、マニュアルや過去の仕訳例を見て「実際の形」を確認したときでした。教科書的な説明を何度読んでも分からなかったものが、具体的な取引例を目にした瞬間に、急につながって理解できたのです。
数をこなすうちに自然に分かってきた、というよりは、ある具体例がきっかけで一気に理解が進んだ、という感覚に近いです。今、当時の自分と同じように悩んでいる人がいたら、抽象的なルールの暗記から入るのではなく、まず実際の仕訳例を見てみることをおすすめします。
振り返ってみると、意味が分からないまま作業を続けていた期間は、だいたい1か月ほどでした。長いようで、経理の1年のうちのほんの一部です。当時は「このままずっと分からないままかもしれない」と不安でしたが、実際にはそこまで長くはかかりませんでした。
腑に落ちたきっかけは、大きく2つあります。ひとつは、上司や先輩から直接説明を受けたこと。もうひとつは、前任者が残した仕訳を実際に見たことです。自分ひとりで教科書と向き合っていた時間より、この2つのほうがはるかに効きました。
抽象的な説明より「具体例」で理解が進む
例えば「現金1万円で消耗品を買った」という取引であれば、「消耗品費(費用)が増えた」「現金(資産)が減った」という2つの事実を、借方・貸方に分けて書くだけです。この具体的な取引を1つ思い浮かべながらルールを確認すると、抽象的な説明だけを読むよりも格段に理解しやすくなります。
仕訳のルールそのものを覚える前に、身近な取引例を1つか2つ、自分の中で「基準となる例」として持っておくことをおすすめします。迷ったときに、その基準例に立ち返って考えられるようになります。

わからなければ、まず聞くこと
当時の私は、分からないことを一人で抱え込んでしまいがちでした。今、同じように悩んでいる新人から相談を受けたら、まず伝えたいのは「わからなければ、抱え込まずにまず聞いてほしい」ということです。
仕訳の意味が分からないまま作業を続けていると、間違いに気づけないだけでなく、理解できない状態がずっと続いてしまいます。聞くこと自体のハードルを下げてあげることが、遠回りに見えて実は一番の近道だと感じています。
いま新人に教えるときは、直近1年の伝票を見せています
立場が変わって、いまは自分が新人に仕訳を教える側になりました。そのときにやっているのは、難しい説明をすることではありません。直近1年分の仕訳伝票を、そのまま見せることです。
自分が理解できたきっかけが前任者の仕訳を見たことだったので、同じ道をたどってもらうのが早いと考えています。1年分あれば、その会社で実際に起きる取引がひととおり出てきます。教科書に載っている取引ではなく、目の前の会社で本当に使われている仕訳を見るほうが、話が早いのです。
具体的に見てもらうのは、伝票と総勘定元帳の2つです。伝票で1件ごとの形を確認し、総勘定元帳でその勘定科目にどんな取引が集まっているかを見る。この2つを行き来すると、仕訳が何を記録しているのかが見えてきます。
新人がいちばん多く間違えるのは「貸借が逆」
新人の仕訳を確認していて、いちばん多く見つかる間違いは貸借が逆になっているものです。金額も勘定科目も合っているのに、借方と貸方が入れ替わっている。この間違いが群を抜いて多いと感じています。
これは注意力の問題ではありません。その勘定科目が、そもそもどちら側にあるものなのかが分かっていないから起きます。逆に言えば、そこさえ押さえれば減らせる間違いです。
これが分かると急に楽になる:勘定科目の「基本の場所」
仕訳がわからないと感じている人に、ひとつだけ挙げるとすれば、勘定科目のグループと、そのグループの基本の場所が借方・貸方のどちらかということです。ここが分かると、急に楽になります。
勘定科目は、資産・負債・純資産・費用・収益という5つのグループに分かれています。そして、それぞれに「基本の場所」があります。
- 借方(左)が基本の場所:資産、費用
- 貸方(右)が基本の場所:負債、純資産、収益
増えたときは基本の場所に、減ったときはその反対側に書く。仕訳のルールは、突き詰めればこれだけです。個別の取引をひとつずつ暗記しようとすると終わりが見えませんが、この5グループと基本の場所だけ押さえておけば、初めて見る取引でも当たりをつけられます。
私自身、当時これを先に教えてもらっていたら、もっと早く楽になっていたと思います。
よくある取引パターンと仕訳の基本形
身近な取引をいくつかパターン化しておくと、初めて見る取引でも「どちらに近いか」で当たりをつけやすくなります。
| 取引 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 現金で消耗品を購入 | 消耗品費 | 現金 |
| 商品を掛けで販売 | 売掛金 | 売上 |
| 取引先へ商品代金を後払いで購入 | 仕入 | 買掛金 |
| 銀行口座に入金があった | 普通預金 | 売掛金など |
| 給与を口座振込で支払った | 給与手当 | 普通預金 |
共通しているのは、「資産・費用が増えたら借方」「負債・収益が増えたら貸方」という基本ルールです。この5パターンを頭に入れておくだけで、初めて見る取引の多くは、どれかの応用として理解できるようになります。
まとめ
仕訳がわからないと感じるとき、実は「やり方」ではなく「意味・目的」でつまずいていることが少なくありません。仕訳は会社の活動を記録し、あとから振り返るための土台だと理解したうえで、抽象的な説明だけでなく具体的な取引例をセットで確認すると、理解がぐっと進みます。わからないときは一人で抱え込まず、まず聞いてみることも大切にしてください。
次の一歩:借方・貸方や勘定科目で迷ったら
仕訳の意味・目的が分かったら、次につまずきやすいのが「借方・貸方のどちらに書くか」「どの勘定科目を使うか」という個別の判断です。このあたりで迷う方は、次の記事もあわせて参考にしてください。
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